EXHIBITION VOYAGE 11
2024年9月14日(土)より、展覧会「ハレの日に」を開催いたします。 本展覧会は、ファッションデザイナー丸山敬太さんのブランド KEITA MARUYAMAの30周年記念連動企画です。
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展覧会によせて
子供の頃、、、、
姉の読んでいた「若草物語」や「赤毛のアン」の中に描かれる、メグの着ていたちょっと時代遅れのモスリンのドレスや、ジョーの背中に焼け焦げのあるドレス。
ダイアナの薔薇色のドレスも、マシュー叔父さんが買ってくれたグログランのパフスリーヴのドレスにも。心が躍る特別なドレス達に想いを馳せていました。モスリンや、縫い取りや、タフタや天鵞絨やら、そんな言葉から、色んなことを想像していました。
今思えば、変わった子でした(笑)
そのうちそれが、「少女漫画」に変わっていき、時々ある巻頭のカラーページ以外の白黒の絵に勝手に色を塗ったり、ストーリーは忘れていても、出てくるドレスやファッション達は今でも鮮明に記憶しています。
そしてその感覚はTVや映画のエンターテイメントの中に広がって、ファッションへとつながって、ずっと胸をときめかせています。
父の友人からいただいた、絹の綿入れの中国服をはじめ、母の手作りのバンビの編み込まれたニットや襟にぐるりと汽車の刺繍の入ったブラウスなど、お気に入りの服を常に着たがった僕は、たまに出かける時の母や姉の「よそゆき」姿や特別の日のしつらえを、いつもワクワクしながら楽しみにしていました。
そんな僕が「ドレス」を創るのは、もはや必然だったのだと、今となっては想います。
とはいえ僕は手先が実は不器用で、デッサン能力も低い。(涙)
歌う人、踊る人、言葉を紡ぐ人、自らの手から何かを魔法のように生み出せる、いわゆる「アーティスト」と呼ばれる人達にずぅーーーっと焦がれ、嫉妬し、時にはコンプレックスさえ抱いていました。
美しいモノへの憧れは、自然に咲く花や、風や、蝶々の鱗粉の妖しさや星の煌めきや遠くから聴こえてくる音楽や、どうしたって僕には超えることの出来ないものでした。
それを易々と手繰り寄せ(もちろん簡単ではないこと理解しています)
表現している芸術家の方々には、いつも畏れすら抱いています。
だって本当に彼らの存在は素晴らしい。
そんな中、そんな作家の皆さんが僕の創ってきた服や世界感からインスピレーションを感じて描いてくださった作品や、キュレーターの山本菜々子さんが選んでくれた作品で構成された今回の展覧会。
なんということでしょう、、、、。
30年を頑張ってきたご褒美のような、
僕にとってのまさに「ハレの日に。」
あの少年だった僕も含めて、沢山の人にみてもらえたらうれしいです。
デザイナー 丸山敬太
EXHIBITION SCÈNE 23
2024年8月10日(土) より、 海や水辺をテーマとした絵画作品と、ヴィンテージ家具の展覧会「海辺と椅子Ⅱ – the Chairs, by the Sea II -」を開催いたします。
2年前の夏、2022年8月に同じテーマで開催した展覧会が大変ご好評をいただき、また私個人としてもぜひまた見てみたい展覧会でしたので、同じ題名をつけて展覧会を開くことにしました。
本展覧会では、前回同様、ヴィンテージの家具と、海辺、水辺をテーマとして制作された絵画を展示いたします。
思えば前回の展覧会を開催した2年前の8月は、まだコロナ渦の空気が残っており、ヴァカンスに出かけることもどこか気が引けて、ひっそりと夏を過ごす方が多かったように思います。
あの異常で不思議な3年間のことを今思い出そうとすると、まるで夢だったのではないかと思うほどに思い出せない部分が多いのですが、それでも、第一回目の「海辺と椅子」にいらした方々が浮かべていた遥かな場所を想うような表情、「ああ、いいわあ」と、素敵なマダムがこぼされた独り言、自分自身の、美しさに胸が締め付けられるような気持ちを思い出すと、人が希うもの、それらが失われていた日々、そうしたことを再び謳歌することができる喜びを、改めて抱きしめたいような思いです。
「海辺と椅子」とは、そのままの意味であり、あるいは、私にとって「自由とやすらぎ」という言葉でもあります。
山本 菜々子
EXHIBITION Voyage 10
2024年6月28日(金)より、佐藤誠高の個展「白い黒 黒い白」を、福岡 cassetteにて開催いたします。
初日は17時より、オープニングイベントを開催いたします。お近くへいらっしゃる際は、ぜひ足をお運びくださいませ。なお、作品に関するお問い合わせは、cassetteまでお願いいたします。
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佐藤誠高は、クローズアップされた人物の顔や植物を鉛筆で極めて写実的に描き、その上からアクリル絵具による抽象的な筆致で塗り潰す作品で注目されています。
特に、雄弁な“目”や“花弁”を絵具で覆うことで、その奥にモチーフの隠し持つリアリティを追求しています。佐藤にとって物事の”表と裏”その境界線上で保たれる危うさにこそリアルな美しさが宿っているという心緒を完成まで膨大な時間を要する作品から感受していただければ幸いです。
本展では、ペインティングに加え、自身が作品の中に入り込めるようなミラー作品も展示いたします。福岡・九州では初の展覧会となりますので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。
cassette
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人は見たいと思う現実しか見ていない。
それは見ないようにしているところにある事実を置き去り、或いは湾曲させ空想の世界に浸ることになります。
複雑に絡み合う現実を偏った視点からだけでなく多面的、重層的に見ることで事実が明らかとなり「確からしさ」が生まれます。
佐藤 誠高
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Artist : Naritaka Satoh 佐藤誠高(協力:SCÈNE)
なお会場では、本年1月に発売した佐藤の作品集が再販されます。
EXHIBITION SCÈNE 22
2024年5月18日(土)より、佐藤翠の個展「Flower Gazing -見つめる花-」を開催いたします。
丘の上の白い一軒家の扉を開けると、花がそこここに飾られ、手縫いのカーテンが、柔らかな日差しを受けて揺れている。
テーブルの上では、美しいガラスの器にフルーツが乗せられ、庭では四季折々の花々が風にそよぎ、片隅に置かれた小さなテーブルの上に、午後のお茶の準備がされている。
佐藤翠のアトリエには、彼女の作品の中の景色があります。
作品と生活とが真っ直ぐにつながっているタイプの作家は少なくないけれど、佐藤の場合、作品の中に生きているというようにも見えるくらい、その生活の景色そのものが絵画的に構成されていて、私は彼女の作品を見る時、その展覧会の前後、およそ彼女がどのような心境で、どのような生活を送り、どんな場所を訪ね、どんなものを愛しんでいたのか、そう遠くないところまで、心を寄せることができているような気持ちになります。
アトリエで「ところで、クローゼットはどこですか?」と尋ねると、「あれは、ないんです。夢なんです。私のクローゼットは、小さくて」という言葉が返ってきました。
これは、私にとってとても面白い言葉でした。
佐藤翠といえば、クローゼットの作品を思い浮かべる方も多いでしょう。そのクローゼットに突如花が紛れ込み、ドレスと溶け合い始めたのは、ほんの2、3年前のことだと記憶しています。
佐藤の庭は、彼女自身が丹精した四季折々の花が咲き乱れ、家中に置かれた花瓶にも、この庭から手折られた花が飾られ、作品にも描かれていますが、彼女のクローゼットの作品にはじめて紛れこんだのはこの庭の花々だと、数年前に彼女自身が展覧会に寄せた文章で触れていました。
衣裳持ちの佐藤のことですから、数々の美しいドレスはもちろん、そして彼女の庭の花々も、彼女の身近な世界に実在していて、実在しないクローゼットがその融合地点となり、それらは段々に花であること、ドレスであることを超えて、美しい色と線、マチエルとして絵画の中に立ち現れ、どんどんと抽象化を進めているようです。
一人の作家の作品が、目の前でこんなにも美しく抽象化していく瞬間を、私はまだ他に見たことがありません。
リヒターが写真と絵画を往き来してきたように、ポロックが絵画に発露する無意識に惹きつけられたように、一人の作家がどこかの高みへの道程をたどっているような光景を、目を離し難い気持ちで見つめる日々です。
山本 菜々子
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花を見つめていると、ふと目が合ったような気になる。
魅惑的な香り、美しい色や難解な造形に見惚れて、そのまま頬が触れるくらいに近づいてみる。近づけば近づくほど、だんだん輪郭は薄くなり、意識は質感と色にフォーカスされていく。しっとりとした花びらの感触、黄色に滲む紫色や溶け合う赤とピンク、それだけではないもっと沢山の色に包まれて、花びらは私の中でマチエルと色に変わる。
そしてその様々な色は、風や光を纏って薄く透けるようなドレスとなり、クローゼットの中に現れる。揺れるドレスと風にそよぐ花の姿が重なる。
佐藤 翠
EXHIBITION SCÈNE 21
2024年3月8日(金)より、長島伊織の個展「Tone」を開催いたします。
ありふれた景色を、銀幕の向こうにあるように描く人。
私にとって長島伊織という作家はそういう人で、彼の作品を前にすると、何がどう描かれていてもそこから溢れ出る物語の香りから彼の作品とわかるのに、その作品から受ける印象だけが、見るたびに行き来することに驚かされます。
ある時は妙に巨匠じみて(という言葉が正しいかはわかりませんが、ともかく若者が描いたようには見えない、ともすれば少し古典絵画のような)、ある時は等身大でフレッシュに、また次に見た時は巨匠のように、また次は…―。
それは作風を模索している最中の作家にありがちなブレというものとも違い、おそらくは技法も含め、意図的とも思えるような、強い意志を持って探求をしているようであり、私はこのバランス感覚を、いつも驚嘆の気持ちを持って見つめてきました。
学生の頃から多くの大人に囲まれて仕事をはじめた彼は、衆目の前で変化の時を過ごしてきましたが、その日々をずっと誠実に力強く作家であり続けてきたのは、細い断崖を歩き続けるような、一筋の光をたどるようなことであったと思います。 これを可能にしたのは彼の強靭な精神力と信念故なのだろうと思ってきましたが、長島が今回の展覧会に寄せて書いてくれた言葉の中に、そこに留まらないない彼の自由で純粋な心が見えて、彼がこれから歩んでいく道の先がますます楽しみになりました。
“時間が過ぎ去っていってしまうことが寂しくて、キャンバスにその形を写しとりたいと思って描き始めるのですが、自分は絵が描きたかったのだと気がついて描いたり消したりしていくと少し絵が動き始めます”
“写しとりたい気持ちと絵を描きたい気持ち。現実世界と絵の中の世界。何度も往復します。 今回の展示ではその往復することをToneとしてテーマにしています”
「形を写しとること」と「絵を描くこと」。
この2つの言葉の間にあるものが、視点の意図的な(あるいは二次的な)挿入だとすると、彼が描きたい絵とは、おそらく自身の見たものではなく、その時の感情や感覚、体感に純粋に形を与えたものなのではないでしょうか。
だとすれば、「絵を描くこと」の着地点としての彼の作品には、まだたくさんの形の与えられ方があるはずです。
往復し、探求しながら、そして、自由に。
山本 菜々子
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今回の展覧会のテーマはタイトルにもあるToneです。
Toneは主に音楽や芸術で用いられる調子という意味で、この言葉が日常や自分の制作にとても関わっていると思いつきました。
私はToneという言葉は曖昧で抽象的な印象を持っていて、細かいニュアンスを言葉で説明することが難しいのではないかと思っているのですが、芸術や音楽など視覚や聴覚、体感を通してこの言葉を使うことがたくさんあるなと気づきました。
私は日常のイメージの中から特に感情的なことや体感について絵を描いているのですが、今はこの言葉を持って制作をすることがとてもしっくりきています。
私の描くモチーフはそのほとんどが人々やその影ですが、私はそこに安心感のある孤独感を感じています。
時間が過ぎ去っていってしまうことが寂しくて、キャンバスにその形を写しとりたいと思って描き始めるのですが、自分は絵が描きたかったのだと気がついて描いたり消したりしていくと少し絵が動き始めます。
写しとりたい気持ちと絵を描きたい気持ち。現実世界と絵の中の世界。何度も往復します。
今回の展示ではその往復することをToneとしてテーマにしています。
長島 伊織
EXHIBITION SCÈNE 20
2024年2月6日(火) より、 守山友一朗の個展「Behind the Window」を開催致します。
アーティストと仕事をする、あるいはアートと生きる醍醐味の一つに、作家の見ている世界、世界の見方を知る、ということがあります。
展覧会の間の一月ほど、いつも私はサロンで作家の作品に囲まれて過ごすことになるのですが、作品と過ごす時間が経つにつれ、その作家の作品にあるような景色、風景、空気が世界に在ることに気づくようになり、まるで作家の視線を追っているかのように、世界を新たに感じる触覚とでもいうようなものを手に入れていきます。
こうした視線の共有ができる人のことを、私はアーティストと呼び、中でもその視線が光の方を向いている方と一緒にお仕事をさせていただいたり、コレクションをしたりしているような気がします。
守山はその意味で言えばまさしく私の思うアーティストであり、例えば彼のそれは、水面のきらめき、テーブルの陽だまり、頬に落ちる影、窓辺の花瓶、ガラスのティーポットに映る窓などの日常にありふれた景色、その一瞬のきらめきであることが多いのですが、それまで意識せずにいたそうした景色に”気づく“ことが増え、水面のきらめきやテーブルに落ちたワイングラスの影を指差しては「あ、守山友一朗」と、世界の中に彼の視線を見つけ、やがてそれは自分の視線と溶け合っていきます。
作品が生き続ける、アートと共に生きるということには色々な意味があると思いますが、 私にとっては、世界の中に作家の見ている世界を持つこと。そして、それが少しの他者性と共に自分のものとなっていくことであり、それはとても不思議で幸福な日々で、私がこの仕事を続けている一番の理由と言えるかもしれません。
今回の展覧会では、守山が描く窓のある景色を、窓のない小さな画廊でご覧いただきます。これからの約一月、そしてこれからの人生もきっと、私は窓を見つけるたびに、どこかで守山の作品を想うのでしょう。
展覧会をご覧いただく皆様も、もしかしたらきっと。
山本 菜々子
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私は窓というモチーフを気に入って描き続けています。
窓は、国や文化が違っても都市や自然の中、形を変えてあらゆる場所に登場し、また裏表もないので、室内から外、外から室内と言ったように多面的な観察を導いてくれます。
どこにでもあるただの窓に見えても、そこに映る自分や、壮大な景色を反射して、世界にたったひとつの特別な存在となっているのです。
旅の途中、窓辺で本を開いた様子が見えたなら、叙情的な時間の流れを感じて心が安らぎます。
一日中部屋に篭りきりの日も、テーブルの上を照らす外光を見れば、この世界は繋がっていると感じられるように、窓のある物語は、私にとってとても前向きなものなのです。
守山 友一朗
EXHIBITION Voyage 9
2024年1月27日(土) より、佐藤誠高の個展「Reality -Dancing on the Edge-」を銀座 蔦屋書店にて開催いたします。
会場展示作品は、1月27日(土)11:00より店頭にて販売開始いたします。展示作品のオンライン販売はございません。 なお、作品の販売や本展に関するお問い合わせは、銀座 蔦屋書店までお願いいたします。
Naritaka Satoh’s solo exhibition, titled “Reality -Dancing on the Edge-” will be presented at GINZA TSUTAYA BOOKS.
The anthology is released on 26 Jan. Perior to the general sale, autographed books will be available for pre-order via Ginza TSUTAYA online shop, the URL below.
2023年11月16日より12月6日まで、Gladstone Gallery とPIBI Galleryの共同主催にて、アレックス・カッツの日本では初めての「新作を中心とした個展」を開催いたしました。
会場の京都、有斐斎弘道館は江戸時代に設立された学問所で、京都御所からほど近い市中にあります。SCÈNEはMaho Kubota Galleryと共同で運営のお手伝いをしました。
Alex Kats Japan’s first solo exhibition that includes mainly his new works was presented from 16 Nov 2023 to 6 December.
This show was co-hosted by Gladstone Gallery, PIBI Gallery, supported by Maho Kubota gallery and SCÈNE. Yuhisai Koudoukan, the venue, was a place of scholarship, in many ways way similar to a modern-day private university, established in Edo period.
EXHIBITION SCÈNE 19
2023年12月1日(金) より、古武家賢太郎の個展「Evergreen Haze」を開催いたします。
昨年の夏、海辺を描いた絵画と家具の展覧会を企画していた時、さまざまなギャラリーにたくさんのアーティストの作品を見せていただき、その中で古武家賢太郎の海景と山景を描いた作品に出会いました。
その作品の画面は幾何学的な文様で構成されていて、一見何が描かれているのかわからなかったのですが、なぜだか目を離せずにじっと眺めていると、ある時その向こうに景色が浮かんできて、幾何学的だと思っていたその形は、途端に作家がその景色を前に感じたのだろう、きらきらしい感情そのもののような光を私の心に運び、以来私はその作品を前にすると、訳もなく遥か懐かしいような、ある美しいものを初めて見たときのような、なんとも言えない眩い気持ちで満たされるようになりました。
その作品はお客様のもとに旅立ち、残念ながら私の手元には残らなかったのですが、どうしてもあの時の気持ち、ある時を境に作家と繋がったような感覚にもう一度出会いたくて、この展覧会をお願いしました。
作家をよく知る人に、彼はどんな人ですか?と聞くと、「好く生きている人です」という言葉が返ってきました。なるほど、それは、古武家作品に共通する、そして私があの時に感じた、世界を、身近な小さなことを、十全に愛し楽しんでいるような空気感を説明するのにぴったりです。
旅先のふとした景色、花束を抱える人、道端の花、窓から差し込む光。それら全てが愛しい気配を帯びて、鮮やかに描かれている。本展のタイトル”Evergreen Haze”はこの話とは関係なく作家本人がつけたものですが、私にとって彼の作品そのものです。
EXHIBITION SCÈNE 18
2023年10月6日(金)より、井上有一と、ジャパニーズ・モダンの家具を中心としたヴィンテージ家具の展覧会を開催いたします。
「書は万人の芸術である。日常使用している文字によって、誰でも芸術家たり得るに於て、書は芸術の中でも特に勝れたものである。それは丁度原始人における土器の様なものであるのだ。」(井上有一 「書の解放」『墨美』9号、1952)
書家が書を独占することをよしとせず、日々の中、長い間日常的に使われてきた文字の中に「書」を見出さんとした井上の作品を、長い間日々の暮らしの中で使われてきた家具、特に井上と同時代を生きた剣持勇、坂倉準三、ジョージ・ナカシマ、柳宗理らの手によるジャパニーズ・モダンを中心としたヴィンテージ家具とともに展示いたします。
Calligraphy : Yuichi Inoue 井上有一、Furniture – Curated by Satsuki Sasagase 笹ヶ瀬皐(Objet d’art) : Charlotte Perriand, George Nakashima ジョージ・ナカシマ, Isamu Kenmochi 剣持勇, Jules Agard, Junzo Sakakura 坂倉準三, Lina Bo Bardi, Pierre Chapo, Pierre Jeanneret, Reiko Tanabe 田辺 麗子, Sori Yanagi 柳宗理
EXHIBITION SCÈNE 17
2023年8月25日より、展覧会Bon appétit!を開催いたします。 国内外のギャラリーさんのご協力のもと、素晴らしいアーティストさんからご出展をいただき、タイトルの通り、食卓の光景、食べ物や飲み物を描いた絵画をグループ展形式で展示いたします。
絵を見て、純粋に、好きだな、楽しいな、幸せだな、と思える、思ってもらえる展覧会を作りたいと思いました。
絵を見ることが好きです。素晴らしい絵を前にした時のぞわりとする感覚や、光に包まれる感覚、自分の好きな場所に好きな絵を飾った時のえも言われぬ満足感は、言葉になりません。
子どもの頃に学校の授業や両親に連れられていった美術館で、芸術になんて全く興味がなかった私は、それでも絵を見ることが大好きでした。と言っても、芸術をしっかりと鑑賞していたわけではありません。美術館にはたいてい食べ物の絵がたくさんあって、とても食いしん坊だった私は、それらを見るのが好きだったのです。
このお料理おいしそうだな、おなかへったな。この絵を描いた人は、あまり食べるの好きじゃないんじゃないかな。だっておいしくなさそう。 このパンはもっとあったかい色で描いたらおいしそうに見えるんじゃないかな。描いた人に教えてあげないと。(それが後から写真を見るとピカソだったりするのですが…)旅先の美術館などでも、ありがたがりもせず同じように食べ物の絵ばかりを(食欲混じりに)見ていたので、もっとしっかり鑑賞しておけばよかったのにと無駄な後悔をしたりもしますが、芸術の造詣なんて全くなかったあの頃、心ゆくまでただ絵画を楽しんだあの日々を、近頃、とても懐かしく思い出します。
私は今、幸運にも絵を扱う仕事をしていて、あの頃よりもたくさん素晴らしい作品に触れる機会に恵まれ、多少の知識にも手を伸ばしていますが、果たして、あの時ほど、純粋に楽しむことができているのかと、ふと思うことがあります。さまざまな背景や情報や知識が、その作品をさらに魅力的に、意義深くする一面があるのは確かで、その流れの中に喜びを見出すことももちろんあるのですが、だんだんに色々なことが背景にくっついて、単純に好きと思うことが難しくなってきてしまったようにも思います。それは私だけでなく、お客様を見ていても、アートに真剣になり、深く足を踏み入れるほどに、純粋な好きからは遠ざかっていく一面があるように感じます。
もちろんそれは、より深く関わっているということで、とても素敵なことでもあるのですが、近頃私は、子どもの頃に感じたあの純粋な好きを、喜びを、楽しみを、もう一度感じたい、そして、見にきてくださる皆様と、そして願わくば子どもたちとも、絵画を楽しむ喜びを、純粋な好きという気持ちを分かち合いたい。時折、こんなことを思っていて、今回この展覧会を企画しました。
ほとんど誰でも一番手軽に幸せになれる方法の一つは、美味しいものを食べることだと思います。その記憶は、きっと、世代も国も超えて、純粋に絵画を楽しむ大いなる助けになると信じています。美しいものを見て、おいしいものを食べ、大切な人と過ごす。これ以上の幸せは、そうそうないのではないでしょうか。秋のはじまりに、美味しい展覧会をお届けします。
参加作家(敬称略,A-Z):Jannis Varelas(Galerie Krinzinger), KYNE(Gallery Target), Midori Sato(Tomio Koyama Gallery), Maria Farrar(Ota Fine Arts), Nana Funo(Tomio Koyama Gallery), Robert Kushner(Yoshiaki Inoue Gallery) Yuichiro Moriyama
本展覧会の収益の一部を、国連WFP(WFP 国連世界食料計画ならびに認定NPO 法人国連WFP 協会)へ寄付いたします。
EXHIBITION Voyage 8
2023年6月8日(木)より、植田陽貴、末松由華利、安田悠による3人展「境界線で見た景色 – Visible and Invisible -」を開催いたします。本展覧会のキュレーションは、小澤茜が初めて担当致します。
SCÈNEに入社しアート業界に身を置いて約4年が経ちました。様々な作品を観て購入し日常的にアートを楽しむようになりましたが、ふと気づくと手元には植物や海辺の作品が多く、多様な作品がある中で抽象画は難しいなあと思うことがたまにあります。けれども今回ご紹介する3人の作品は、初めて触れた時、抽象的な作風ながらそのような感覚のなかったことが印象的でした。筆致が目に気持ち良いとか、イメージソースが身近であるといった点が魅力となって、そもそも絵画として観ていてとても楽しいのです。それでいて鑑賞の後に、世界の見方が変わるような特別な経験をしたという高揚感が残ります。私にとって抽象表現を親しみやすく目に楽しいものとして感性の幅を広げてくださった3人の作品を皆様にも是非ご覧いただければと思います。
EXHIBITION SCÈNE 16
Art Salon SCÈNEは、展覧会” L’art de vivre -住まいと美- “を開催いたします。
SCÈNEを始めて6年が経ち、様々な展覧会、美術館、フェア、作家のアトリエなど、アートがある空間に身を置き訪ねる生活を送っています。涙が込み上げる様な美しい出会いもあれば、辛い状況を連れてくる様な出会いもあり、お仕事としてアートを扱わせていただいていますが、”商材”と呼ぶにはあまりに人間的なその在り様に、いつまで経っても慣れることなく新鮮に心動かされる毎日です。
世界を旅して作品を見てまわる中で、ただ“名前”を並べて展示している場所、アートは素晴らしい場所、空間は美しい場所、そして持ち主の方の美意識やお好みが空間全てを満たし、ただ美しく胸がいっぱいになる場所、様々なケースを目にし、このところようやく、自分が目指すもの、好むもの、やりたいことが見えてきたように思います。
「アートのある景色が美しいこと」。6年前に「アートのある景色を増やしていく」という漫然たる想いでつけたSCÈNEという名前が今一度目前に立ち現れたようでもありますが、今度はしっかりとした輪郭を持って、これが私の目指すもの、好むもの、やりたいことだと感じています。アートだけでも、空間だけでも、家具だけでも、調度品だけでもなく、その全てが美意識や好みと溶け合い美しく居心地の良い場所をいつか作りたい。そして、たくさんの人にとってのそんな場所を作るお手伝いがしたい。こんなことを夢見て、去年から少しずつ手を伸ばし始めていた家具だけでなく、今年はその道のプロの力をお借りして、様々なジャンルの美しいものを、アートと共にご紹介していこうと思っています。
今回の展覧会は、江戸川区にある家具のギャラリー、Objet d’art の笹ヶ瀬皐さんに家具のキュレーションをお願いしました。笹ヶ瀬さんが選ばれたのは、偉大な建築家、Charlotte Perriandと彼女と同じ時代を生きた建築家達の手による家具です。また、アートは、ペリアンが作ったスキーリゾート Les Arcsの山小屋をイメージし、そこにあったら素敵だなと思う作品を私が選ばせていただきました。
扱われているモチーフはこちらで意図的に選ばせていただきましたが、生活を慈しんで生きて描いているという点が、お声がけした作家の皆さんに共通していると思っています。建築だけでなく、家具だけでなく、生活のためにその全てを作っていたというペリアンとアートのある景色を、展覧会のひと月ほどの間、皆さまにお楽しみいただけましたら幸いです。
絵画:今坂庸二朗 (Private collection)古武家賢太郎(MAHO KUBOTA GALLERY), 佐藤翠(小山登美夫ギャラリー),安井鷹之助(MAHO KUBOTA GALLERY), Jean-Philippe Delhomme (Private Collection)
家具:Curated by笹ヶ瀬皐(Objet d’art) Charlotte Perriand, Bernard Taillefer, le Corbusier, Jean Prouve, Pierre Chapo, Pierre Jeanneret
EXHIBITION Voyage 7
佐藤誠高の個展「REVEAL」をニューヨークのGR galleryにて開催いたします。アメリカでは初個展となる本展覧会では、本展のために制作された新作14点を展示いたします。お近くへいらっしゃる際はぜひ足をお運びください。なお、作品の販売や本展に関するお問い合わせは、GR gallery までお願いいたします。
EXHIBITION SCÈNE 15
INFORMATION
Art Salon SCÈNEは、佐藤誠高の約2年ぶりとなるEdition作品を2作品、抽選で販売致します。ご希望の方は、応募フォームにて注意事項の全文をご確認の上、お申し込みくださいませ。ご応募いただいた段階で、注意事項にご同意いただいたとみなしますのでご注意ください。なお、抽選方法や当選に関するお問い合わせには一切お答えいたしかねます。コメントやダイレクトメッセージ、お電話やメールでご連絡をいただきましてもお返事できませんので、何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。
EXHIBITION SCÈNE 15
Art Salon SCÈNEは、佐藤誠高の個展 “Show Case”を開催いたします。
それは、ある日突然やってきました。世界中から毎日のように作品への問い合わせが届く。どこで知るんだろう。
Edition作品を売り出せば、1分もしないうちに販売サイトのサーバーがアクセス過多で落ちる。買えなかったお客様から、クレームの電話が入る。電話番号も公表していないのに。
展覧会をひらけば、優劣などつけようもなく何れも大恩ある素晴らしいコレクターのみなさま方から、口々に作品がどうしても欲しいのだけどと言っていただく。作品が足りない。
世界中から、展覧会を開きたいと、問い合わせが入る。いくつか企画が進行しているけれど、ほとんど手が回らない。
突然訪れたこの状況に慌てたのは私だけで、当の本人は全ての対応を私に任せたきりスッキリした顔をして、何も変わることがありませんでした。
佐藤は、毎日、朝から晩まで(昼から明け方まで、といった方が正しいですけれど)、絵と向き合って生活しています。
たまに会ってご飯でも食べにいくと、その時はとても楽しそうにしてくれるけれど、そのうちソワソワし始め、早く絵を描きたいと言って22時すぎの終電で必ず帰っていき、あとは人に会わず、外にも出ず、ひたすら絵を描いています。自分を取り巻く大渦のような流れのことなど、どこ吹く風です。
人々の興味関心は日々移り変わり、その対象は消費されていきます。
単なるモノであることを超え、誰かの人生に深く入り込むか、歴史に編纂されるか、はたまた枠組みからも逃れ我関せずを決め込むことでしか、消費される運命から逃れることはできません。(それですら、全ては消費の一環あるいは結果であるという議論はおいておくとして)ほとんど全てのことに当てはまるだろうこの言説は、現代アートにも、もちろん残酷なまでに当てはまり、近年その速度と度合いはとみに増しているようです。
そうした中、突然訪れた状況に動じることなく、かといって目を向けないわけではなく、全てを見渡した上で傍に置き、ただ息をするように日々の制作を続ける佐藤を見ていると、敬愛する作家、城山三郎さんの著書の中の言葉を思いだします。
「静かに行く者は健やかに行く。健やかに行く者は遠くまで行く」
佐藤は、これから世界のさまざまな場所で展覧会を開き、たくさんの人と出会い、たくさんの眼差しや言葉に触れ、いずれ作品にその日々を投影するのでしょう。これまで通り、淡々と。佐藤がこれからどのように生き、世界を航っていくのか。皆様同様、私も心から楽しみにしております。
また、本展覧会では、約2年ぶりとなるEdition作品を発表いたします。さまざまな技法で呆れるほど何度も試作を重ね、ようやく佐藤の納得がいく作品が仕上がりました。
展覧会会場では、小作品、Edition作品のほか、佐藤と選んだJean Prouveの家具と共に、アトリエから持ってきたものも少しだけ展示いたします。佐藤の作品がどのような場所で生まれるのか、そして、それらがこれからどこへゆくのか。その一端をのぞいていただければ幸いです。
EXHIBITION SCÈNE 14
Art Salon SCÈNEは、展覧会「海辺と椅子-the Chairs, by the Sea-」を開催いたします。
本展覧会では、絵画作品と名作椅子を展示いたします。椅子は海外の物故作家、建築家のオリジナルを中心に、海沿いの街で作られたものや、水辺にゆかりのある作品を集めており、絵画作品は、海景を中心とした国内外の作家の作品を展示いたします。名作椅子に腰掛けて海辺で過ごす一日のような、ゆったりとしたひとときを過ごしていただけたら幸いです。
EXHIBITION Voyage 6
Objet d’ artにて、ベルギーの現代家具作家の作品や、様々なヴィンテージ家具の展覧会が開催されます。山口峰子がアートキュレーションを担当し、タカ・イシイギャラリー様、小山登美夫ギャラリー様、ミヅマアートギャラリー様、そして日本有数のコレクター様ご協力のもと、タブローや彫刻作品を展示させていただきました。
EXHIBITION Voyage 5
KEITAMARUYAMA デザイナー丸山敬太さんと、Art Salon SCÈNE ディレクター山本菜々子が共同キュレーションしたグループ展を開催いたします。
EXHIBITION SCÈNE 13
Art salon SCÈNEは、守山友一朗の個展「lluminate」を開催いたします。
2018年秋のパリ、友人の作家のアトリエの片隅で、セーヌ川が見える窓辺に飾られた小さな絵を見つけました。
当時、今よりもずっとアートのことがわからなくて、それでもどうにか現代アートの世界に入って生きていかなければならないと、日々作品と人の波に揉まれ、マーケティングやら潮流やらを踏まえた”現代アート”を学び、わかったようなふりをすることに疲れ切っていた私は、バレリーナが描かれたその素朴で美しい作品からなぜだか目が離せなくなりました。
ぜひともこの作家に会ってみたいとお願いし、その週末に一緒にディナーに出かけたのが守山友一朗との出会いでしたが、この日から今日まで、この友人と守山は、私がアートの世界を生きる、そして人生を生きる上での、大きな指標でい続けてくれています。
昨今の、ことに日本のアートシーンでは、美しいもの、綺麗なものをそのままに表現することは、どうやら難しいことになってきているように思います。
誤解を恐れず、あえて現代アートを知略とマーケティングというルールの上で遊ぶ競技と考えるとすると、守山の作品は、そのルールを知りながらも染まらない強さを備えていると言えます。
守山の作品は、守山の目と筆を通してまっすぐに語られる世界の美しさへの賛美に他ならず、信念とも呼べないほどあまりに自然に強固にそして豊かに守山に備わった美を愛し真っ直ぐに楽しむ心を前に、私が身につけ始めていたささやかな知略やマーケティングの知識など、つゆほどの意味も見出すことができませんでした。
守山の作品は、自分の愛するものをまっすぐに愛していると言うことの美しさと強さを、いつも私に教えてくれます。今私が信じる道を照らしてくれた、かけがえのない出会いでした。
EXHIBITION SCÈNE 12
Art salon SCÈNEは、長島伊織の個展「みちばたの手紙」を開催いたします。
長島伊織は、弱冠24歳にして、たいへん人間ができている。
自身のことを語るよりも周囲への気遣いを先に立たせ、誰にでも礼儀正しく、それでいて若者らしい純真さも持ち、作品に向かう姿勢は大変真摯で勉強家。
また、やわらかな物腰や繊細な容姿からは想像もつかないが、幼い頃から父親にすすめられて習った空手も、相当な腕前のようだ。
年齢に関係なく、周囲と一定の距離をとり、理性的に、その時自分が周囲から望まれているように振る舞うことができる人間が、どれだけいるだろうか。そして、それが息をするようにできてしまう本人は、いいかげん辛いんじゃないかと思う。
なぜそれができるように、そしてするようになったのか。
「ラッピングがとてもきれい。非の打ち所がない人だな。そして、生きづらそうだな(いいね、その間が気になるよ)」
それが、私が長島に初めて会った時に持った感想だった。
長島本人に出会う前から知っていた彼の作品は、モチーフとして人物やものを選びながら、触れれば何かが溢れそうな繊細な心のうちを描いていると見てとれるような叙情性を持ち、長島の言葉を借りれば、あきらかな「物語」性に溢れている。
若い人が描くそうした作品は、得てして客観性を欠き、それが魅力でもあるのだけれど、ひとりよがりになってしまうことも少なくない。
けれども長島の作品は、物語に溺れることなく、対象とある一定の距離を保とうとしていることがわかり、ひどく大人びたその姿勢と、みずみずしく叙情的な作品の中にある眼差しとの距離の中に、長島伊織という作家の本質が見えるように思う。絵画と彼とは一体なのだ。
「最近、日常の中のものを、フラットに描けるようになりました。日常を描くときは、突き放す力が必要で、例えばネットの中で探した画像を描くときは、引き込む力が必要。人間関係でいうならば、大好きなバーのマスターは描けるけど、彼女のことは描けない」
そう語る長島が今回描いたのは、まちかどで出会った人々や風景、友人、行きつけのバーのマスターや店員。そのほどんどが、カメラを片手に出かけ、自分で切り取った景色だ。
何度か時間を過ごしてから、異なる関係性のモチーフの中に一貫して描かれているものや、作品の根本にあるテーマについて、長島に尋ねてみた。
長島の答えを聞いてから作品リストを眺めていたら、自然とメインビジュアルと展示プランが浮かんだ。
「僕は物語を描いているけれど、本当は愛を描いてると思う。愛というものが難しいから、物語と言ってるのかもしれない。でも、その物語の中心には、愛があります」
EXHIBITION SCÈNE 11
Art salon SCÈNEは、佐藤誠高の個展 “ Dancing on the Edge” を開催いたします。
佐藤の作品をはじめて目にした時、その繊細さと大胆さに心底驚かされたことを覚えています。
一見写真のように見えるモノクロームの人物や花は、目を凝らせば鉛筆で極めて緻密に描かれており、その上に大胆かつ重厚に絵の具が重ねられています。
佐藤は、例えば人物ならば後に覆い隠す目の、花であれば花弁の、印象をはじめに鉛筆で描いてからその上に絵の具を重ねますが、佐藤はその絶妙な均衡の上に「リアル」を描き出すことを試みています。
佐藤にとってリアルとは、例えば表面的な美しさに表れるものではなく、そのうちに潜む狂気と社会性、本能と優しさなど、様々なものごとの狭間で保たれている危うい均衡の上にこそ見えるものであると言います。
なるほど、瞳や花弁といった佐藤が覆い隠すパーツは、その存在自体があまりに雄弁です。
その奥に潜むものに想いを寄せる時、はじめて佐藤の描き出さんとしたものが見えてくるのかもしれません。
EXHIBITION SCÈNE 10
Art Salon SCÈNEは、7名の若手作家のグループ展 “the sight of the stars makes me dream” を開催いたします。
本展覧会名は、Vincent Van Goghが弟のTheoに宛てた手紙の中の言葉、「For my part I know nothing with any certainty, but the sight of the stars makes me dream」から取りました。
訳してみれば、「どういうわけか、星々の輝きが夢を見せてくれる」というような意味になるでしょうか。
作家や作品と対峙した時に、ふと、「ああ、この人は遠くまで行くのかな…」と感じることがあります。
はっきりとした前触れもなく、ほんの一瞬の間に通り過ぎるその時に立ち会えるかけがえのなさに気づくことができたのは、実はごく最近のことです。
本展覧会では、今年に入り、全国の卒業制作展や展覧会に足を運んで出会った数ある得難い出会いの中から、皆様に、特に今この時をご覧いただきたい作家・作品をご紹介いたします。
EXHIBITION SCÈNE 9
Art Salon SCÈNEは、辰巳菜穂の個展”空、影、路地 – Sky, Shadow, Alley -”を開催いたします。 辰巳菜穂は、Google ストリートビューというGoogleが世界中から無作為かつ無尽蔵に収集しデータ化した情報としての景色の中から、自身の心に響いた景色を切り取り作品を制作します。 辰巳の作品で描かれるのはいつも、エッフェル塔やエンパイア・ステート・ビルなどの象徴的な景色ではなく、地元のコーヒーショップ、誰かの家、どこか哀愁ただよう看板など、世界のどこかで暮らす誰かの日常の中の、何気ない景色です。 これらが何を求めて選ばれ描かれたのかと考える時、本展覧会で辰巳が発表する、人物に焦点をあてた作品に関する辰巳のコメントが、その答えの輪郭を見せてくれます。 辰巳は、「そこに人がいると限定的な場面に引き寄せられる気がして」と、初期作品では景色の中に描きいれていた人物を近作ではほとんど描いてきませんでしたが、本展覧会では、ストリートビューの中の顔がぼかされた人々を「解像度の低い人たち」と呼び、「解像度が低いからこそ、彼らの本質を垣間見ることができる」と述べ、彼らを生き生きとキャンバスの上に描いています。
有史以来、人間の生み出した技術は日毎に発達し、昨今ではあらゆることが様々な技術により符号化された情報を介して行われるようになりました。 世界中が変化を強いられたこの一年でこの傾向がますます推し進められ、高度に情報化された社会でもまだ当たり前に残っていた、たくさんの温もりを伴ったやりとり、情報からは得られない体験を手にすることが困難になったことは言うまでもありませんが、Googleストリートビューという「情報」をインスピレーションの源泉とする辰巳の作品には、私たちが今もっとも求めているものーぬくもりや気配、あるいは、それらが純然と立ち現れるものとしての「空、影、路地」が描かれているのではないでしょうか。EXHIBITION Voyage 4
KEITAMARUYAMA デザイナー丸山敬太さんとディレクター山本菜々子が共同キュレーションした展覧会。 守山友一朗さんと佐藤翠さんの作品を展示しました。
EXHIBITION SCÈNE 8
Art Salon SCÈNEは、森田恭通の個展”Brain”を開催いたします。 森田は、デザイナーとして世界的名声を得る一方で、2015年にパリで開催した個展を皮切りに、写真家としてのキャリアを歩んできました。
以降、「誰も自分を知らない土地で作品を評価してもらいたい」との想いから、毎年パリで個展を開催。バカラ美術館や、パレ・ロワイヤル庭園内のGalerie Corrazza1787などで個展を開催し、写真の本場とも言われるパリで、毎年大変高い評価を得てきました。 女性の曲線、花、シャンパンの泡…と、一貫して自分の本能、惹かれてやまぬ美しいもの、ひいては人間の本質といったものを追ってきた森田の最新作”Brain”では、被写体に写真家の自己が投影されるという写真の本質を逆手に取り、森田は「本」という被写体を選び、脳内を可視化する試みを行なっています。 長い間、デザイナーとして世界の第一線で「構図」や「線」と向き合ってきた森田の撮る対象物はいつも、まるで「アール」と「線」に分解され、圧倒的な構成力を以って写真の中で新たな形を与えられているかのようです。EXHIBITION SCÈNE 7
Art Salon SCÈNEは、守山友一朗の日本初個展を開催いたします。 守山の描く世界は、彼が14年にわたり生活したフランスでの日常や、休暇に訪れたヨーロッパの国々での穏やかな日々の中で目にした、たくさんの小さな愛しさや優しさ、美しさに溢れています。
昼下がりの公園でくつろぐ人々、初夏の木漏れ日、窓辺で風に揺れる花、宮殿の小部屋、冬の夜の暖かな灯り、日々の食卓、あるいは、それらが放つ星のようなきらめき。 生まれ育った国において「日常に美しさを見出す」というと、例えば丁寧な暮らしぶりや心温まる食卓など、あえてわかりやすさや今日性を外し、ありふれた日常から少し離れたものに目を向けがちですが、守山は14年間の滞在中、異国からの訪問者として あらゆるものをロマンを持って見る心を失わず、かつその地で暮らす生活者としての現実的な視点も併せ持っていく中で、本当の意味でのフランスやヨーロッパ ーあるいは逆説的に日本ー での日常に潜む美しさを描き出しています。 それらはいつかの旅で見たことがあるような光景でありながら、時として、別世界のような光景としてキャンバスに現れ、見る者を現実と非現実の間へと誘います。 本展覧会では、守山の初期作品から最新作まで、幅広くご覧いただくことができます。 フランスでも数々の展覧会を開催し、高い評価を得た守山の、極めて緻密な筆致で描かれる作品をお楽しみください。EXHIBITION SCÈNE 6
本展覧会では、佐藤翠が一年間のパリ滞在中に制作した作品をお披露目いたします。 作品はどれも、セーヌ川の水面に映る街灯の明かり、星のまたたき、暗がりに光る宝石の輝きなど、パリ滞在中に佐藤がとりわけ心惹かれたパリの夜の煌めきを、美術館や街角のショーウインドーで出逢ったドレスやシューズ、市場に並ぶ色とりどりの果物などから得た着想と重ねて制作されています。 また、本展覧会では、佐藤初の試みとなるフルーツシリーズを発表いたします。 古典的なモチーフである果物に対して佐藤は柔らかな感性で挑み、自身の画風に新たな可能性を広げながらも、佐藤翠作品の世界観の中に見事におさめ、その類い稀なる才能を示しています。 また、クローゼットや靴、果物といったモチーフを選びながらも、佐藤が描くそれは抽象画のようで、夜の煌めき、時雨、あるいは宇宙のようにも見え、パリでの一年間で佐藤が触れた様々な風景や思索を、作品を通して感じ取ることができます。 協力:小山登美夫ギャラリー
EXHIBITION SCÈNE 5
東京藝術大学/大学院において日本画を学び、博士号を修めるという経歴を持ちながら、ライブパフォーマンス、ファッションブランドやインテリアブランドとのコラボレーションなど常に新しいことに挑戦し続け、日本画の新たな可能性を拓くアーティスト・大竹寛子氏の展覧会を開催します。 ライフワークとして扱う花や蝶といったモチーフに、常に流動的な現在を重ね、魂の成長の象徴として描くという大竹氏の作品は、日本国内のみならずニューヨークをはじめ世界中で高い評価を獲得しており、本展覧会でも作家とともに成長し続ける作品の数々を発表します。
EXHIBITION Voyage 3
“Art for your Voyage”「アートを旅する」をテーマにした“Exhibition Voyage ”シリーズ。 宝飾品、食器、茶器、時計、車、カメラ、絵画・・・ その他諸々、ジャンルも時代も値段もバラバラですが、 「時」という展覧会の名前そのままに、 時を超えてなお輝く古今東西の面白いものを集めました。 パリの蚤の市をのぞくような気持ちで、お楽しみいただけますと幸いです。
2018.3.10(Saturday)- 4.4(Wednesday) OPEN:1:00p.m.-7:00p.m. No public day/Appointment only Invitation required 今回の展覧会は展示の性質上、public dayは設けておらず、完全ご招待制/こ予約制で開催いたしております。Invitationをお持ちでない方のご予約はお受け出来かねますことご了承ください。EXHIBITION Voyage 2
“Art for your Voyage”「アートを旅する」をテーマに、多様な作家をご紹介する”Exhibition Voyage “シリーズ。 第二回目は、古典的な水墨画と前衛的な水墨画、その両方が混ざり合う独自のスタイルを築き上げた水墨画家・土屋秋恆氏の作品展を開催いたします。 展覧会の名前の通り、水墨画で古より数多くモチーフとされてきた「海」をテーマとした本展覧会では、これまでの水墨画のイメージを打ち破るような土屋氏の世界をご紹介いたします。
キュレーター:山本菜々子 藤巻佳奈EXHIBITION SCÈNE 4
事務所でSCÈNEでやる展覧会の写真をセレクトしていると、某外国系ファッション雑誌の編集女が来て、「へぇー、優しくて 美しい写真ネ。最近 濃いのが続いたから 清涼感ある この写真いいんじゃない」と誉めてくれた。濃いって『快楽の館』と『LOVE DOLL』のことかなぁ…… 篠山紀信
会期:2017.10.14(土)- 12.22(金) OPEN:13:00-19:00 火・水・金 ・土:アポイント制 ※招待制につきINVITATIONをお持ちの方のみ受付。ご希望の方はお名前とご所属を添えてinfo@scenetokyo.comまでご希望の日時をご連絡ください。 Public Day:祝祭日を除く毎週木曜日14:00~20:00 休廊日:日・月・祝日EXHIBITION SCÈNE 3
パリを拠点として活動するアーティスト・河原シンスケ氏が、昨年の西本願寺伝道院での展覧会に続き、今回Art Salon SCÈNEで作品発表を行います。日本に生まれ30年来フランスで生活している河原氏は、かつてゴッホやモネも憧れ追い求めたジャポニズムを独自の感性で表現し続けており、今回の作品展では、ライフワークとも言える うさぎ をテーマにした作品をはじめとし、様々な形「Forme」の中に、それを表しています。
会期:2017.6.2(金)- 7.27(木) OPEN:13:00-19:00 月・火・水・金:アポイント制 ※紹介制につきINVITATIONをお持ちの方のみ info@scenetokyo.comまでご希望の日時をご連絡ください。 Public Day:祝祭日を除く毎週木曜日14:00~20:00 ※木曜日のみ、どなたでもご来廊いただけます 休廊日:土・日・祝日EXHIBITION Voyage 1
“Art for your Voyage”「アートを旅する」をテーマに、多様な作家をご紹介する”Exhibition Voyage “シリーズ。第一回目は、独自の手法により 絵画と写真を行き交うような美しき架空の世界を生み出す、池田衆氏の作品展を開催いたします。 ゲストキュレーター:田辺良太 協力:Maki Fine Arts
会期:2017.3.16(木)- 4.10(月) OPEN:13:00-19:00 休廊日:土・日・祝日 ※アポイントメント制 ご希望のお日にちの2営業日前までに第一候補日、第二候補日をinfo@scenetokyo.com宛にご連絡くださいませ。EXHIBITION SCÈNE 2
靴、クローゼット、ジュエリー…日々の中にある一瞬のきらめきを 絵画の中に閉じ込めたような佐藤翠氏の作品を美しい住空間のようなSCÈNEでご覧いただける作品展です。 協力:小山登美夫ギャラリー
会期:2016.11.25(金)- 2017.1.21(土) OPEN:13:00-19:00 休廊日:日・月・祝日 ※12/25(日)-1/9(月)閉廊EXHIBITION SCÈNE 1
昨年パリの個展で好評を博した森田恭通氏の作品を、すべてシルバーゼラチンプリントで制作した初公開の写真展。森田恭通氏がこれまで表現してきた世界観とは異なる新しい局面を示す作品です。
会期:2016.10.14(金)- 10.27(木) OPEN:13:00-19:00(金曜日は21:00まで) 休廊日:日・月・祝日